時間は午前11時過ぎ。
ブルー・モスクは、午前11時半から午後1時までは礼拝時間のため、観光客は入場できない。

急いで入り口を探していると、一人の青年が迷っている私を見て、入り口を教えてくれた。
入り口前にたくさん並んでいる蛇口について聞いてみると、礼拝する前に身を清めるためにあるものだそうだ。

せっかくなので、清める手順を教えて欲しいと言ったら、若干驚いた様子だったが、快く説明してくれた。

日本でも、神社やお寺に参拝する際、手や口を清めるが、それと同じような感じだと思っていたら、イスラム教はものすごく丁寧に身を清めることが分かった。

この、礼拝の前に身を清めることを「ウドゥ」と呼ぶ。
手や口だけでなく、顔、耳、鼻、髪、腕など、隅々まで清める。

私の場合、そこまで清めなくていいよと言われたので、軽く素振りをしただけだが、しっかりやったら、10分ほどはかかるだろう。

そうこうしているうちに、ブルー・モスクの礼拝時間が始まってしまったため、入場出来ず。何して時間を潰そうかと思っていたら、彼が、ブルー・モスクよりいいモスクに案内してくれるとのこと。

見ず知らずの人に付いていくのは若干気が引けたが、特に何もすることが無かったし、現地の人しか知らないことを聞いてみたかったのもあり、案内してもらうことに。

道中、カラフルな建物の前を通る。
かわいらしい。

案内してくれたのは、リトル・アヤソフィア(英:Little Hagia Sophia Mosque)。

元々は6世紀前半に教会として建てられたが、1497年にモスクに改築された。

ちなみに、ブルー・モスクは17世紀初頭に建設されたため、リトル・アヤソフィアの方が千年以上前から存在していた。

彼曰く、「観光客はみんな派手で大きなブルー・モスクばかり注目するけれど、本当はこっちの方が断然長い歴史を持っているんだ」と語ってくれた。

ここでは、入場口でスカーフのレンタルは行なっていなかったため、持参必須。

シンプルだが、装飾が非常に細かく、綺麗。
天井がドーム型になっていて、かなり高い。
奥へ進む。
礼拝堂。
部屋奥の、壁が凹んでいて、装飾が施されているところは「ミフラーブ」と呼ばれている。人々はこの方向に向かって礼拝する。
その右横にある階段は説教壇、「ミンバル」。ここから導師が説教をする。

確かに、ブルー・モスクと比べるとかなり小さくて、人気も少なく、観光客は私を含め数人しかいなかったが、静かで落ち着いた雰囲気がとても心地良く感じた。

礼拝時は、絨毯の横線に沿って座るらしい。
「ここには大昔に造られた遺跡が残ってるんだよ」と言って、カーペットをまくって見せてくれた。
これは昔使われていた井戸の遺跡らしい。
ガラス張りで、中を覗くことができる。
深い。
リトル・アヤソフィアの、ウドゥ用の洗い場。
日陰で猫がくつろいでる。
時の流れがここだけのんびりと過ぎていくように感じる。

さて、そろそろお礼を言って別のところへ行こうとしたら、彼の親戚の家が絨毯を売っているお店だから、ぜひ寄っていくといいよと勧められる。

日本で「絨毯売り」なんてなかなか聞かない響きだったため、どんな物を売っているのか気になり、見てみることに。

これが典型的なトルコの「絨毯売り」の手法だったなんてつゆ知らず…。

トルコには様々な場面でチャイを飲む習慣がある。
私も事務所を訪れた際、チャイを頂いた。
トルコでは人と仲良くなりたい時、ゆっくりおしゃべりしたい時は、「チャイ飲もうよ」と一声掛けるという。
この液は、手に塗っていい匂いを醸し出すもの。
日常的に塗るらしい。
大小様々な柄の絨毯が部屋に並ぶ。
店主のマシンガントークが1時間ほど続く。絨毯は一つ一つが手作りで、柄によって意味が異なるのだそう。

シルクでできている絨毯は燃やしても火が消えるというので、じゃあ火をつけさせてとライターで裏面に火をつけてみた。

消えるかと思ったら、本当に燃えそうだったので慌てて店主が消す。燃やし方にもコツがあるそうで、店主が燃やすと綺麗に火が消えた。

そんなこんなで、全く買う予定のなかった絨毯を買うことに。
一番小さいものはリュックサックくらいの大きさだったため、これだとかさばらないし部屋に飾っても可愛いかなと思ってしまったのだ。

いざ会計になると、店主が「特別に割引してあげるよ〜」と言い、「3,000リラ」と電卓に打って見せてきた。

桁が大きすぎて、1リラがいくらなのかもよくわからなくなり、ゆっくり計算させてもらう暇が無いくらいうま〜く会計に誘導され、カードを切ってしまった。

後から冷静になって計算すると、なんと日本円で7万円弱もしたのだ。

絶望。やられた…。

いや、私が冷静さを失っていたのが悪いのだが、あんなにおだてておいて、結局は観光客のことは金としか見てない人だったんだと怒りが込み上げてくる。

この教訓から、話しかけてくるトルコの人々や店員に異様なまでにしつこく疑うようになるのはまた後の話。

絨毯を買った後、明日カッパドキアに行きたいと相談したら、地元のいい旅行会社を教えてくれた。

自力でチケットを取ろうと思ったのだが、トルコの長距離バスを自分で取るのは至難の技だと判明。

そもそも、中心地から長距離バス乗り場までの行き方やバス停探しが大変らしい。

さらに、気球にも乗りたかったため、行き帰りの長距離バスの手配、気球ツアー、宿泊が含まれているものを紹介してもらい、納得できる値段で予定を組むことができた。

ここでもチャイを何杯も出してもらった。

だがしかし、まだ絨毯の事件がモヤモヤする。
取りあえず怒りと自分の情けなさを落ち着かせるため、教えてもらった美味しいケバブ屋さんへ行く。
この店主に勧められた店に行くのは癪だし、悔しいけどテラス席で食べる本場のケバブは美味しかった。

包むタイプではなくプレートで食べるタイプのケバブ。

食後、午後3時過ぎになったため、街をぶらぶらしながらブルーモスクへ向かう。

トルコの習慣を表しているかのようなレストランの看板。
「水タバコ」、「アイスクリーム(トルコアイス)」、「ケバブ」、「チャイ」。

いよいよブルーモスクへ!


Airi Tabei

田部井 愛理(たべい あいり) 1994年生まれ。 世界一周、ロードトリップ(アメリカ西海岸往復、アメリカ横断、アメリカ国立公園巡り)達成。 日本の大学を休学し、シアトルへ留学。 アメリカ生活が楽しくなり、日本の大学を中退してシアトルのHighline College (短大)でHospitality and Tourism Managementを専攻。卒業後はUniversity of Washington Tacoma(ワシントン大学)に編入しArts, Media and Cultureを専攻、卒業。 ニューヨークで、週間情報紙「ニューヨークBiz!」で1年間OPTとして働いた後、日本に帰国。

0件のコメント

コメントを残す

アバタープレースホルダー

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。