大人な雰囲気の漂う、小綺麗で落ち着いた街、衝山・和集の一角にTHE MIX PLACEはある。
THE MIX PLACEは、カフェとイベントスペースが併設されている、いわゆるブックカフェだ。
周辺はとても静か。
3階まである、こじんまりとした建物全体をこのブックカフェが所有している。
見た感じ、「本屋」っぽさはない。おしゃれなカフェといったところか。飲み物を飲む予定は無かったし、店の中をちょろっと覗くと値段が高そうな雰囲気。入りづらく感じ、建物の周りを一周してから意を決してドアを開ける。
正面入り口から入るのを躊躇い、裏口から入る。
いざ中に入ったら、カフェのスペースはほんの一部にしかなく、目の前に本がぶわーっと並んでいる。見た目こそ入りづらかったが、店内はすごく落ち着いた雰囲気の本屋さんだった。入った第一印象、「なんて洒落た本屋なのだろう」。
入店すると、すぐ目の前に本棚がある。ここに一旦身を隠す。 黒い本棚と洋画のポスターがオシャレ感を一層引き立てる。
よく見ると綾辻行人の本が10冊ほど置いてある。なんで段ボールで本棚の場所を取っているのかは謎。パッケージに若干日本語も混じってるのも謎。日本の本も置いてあるのか。
急に洋書の棚がある。「Authors J.K」というタグが見えるので、きっと他の棚にも洋書は所有しているのだろう。
本棚からこっそり覗き込むとカフェがある。テーブルは5つほどで、カフェにそこまで大きなスペースを設けていないようだ。だがメニューは豊富そう。
カフェコーナーと本屋コーナーとの仕切り。右側には今月売れた本や雑誌などが飾られている。左側をよく見ると、中央の棚になぜか「蒸気でホッとアイマスク」が。なぜここにあるのかはやはり謎。
ひとまず一階をぐるっと一周してから、レジにいた店員に、「店内の写真を撮っていいですか」と英語と中国語に訳されたGoogle翻訳の画面を見せる。すると、画面に自動翻訳された文章が支離滅裂だったのか、首を傾げてう〜んといった具合に困っていた。
すかさずスマホをかざし、ジェスチャーでシャッターを取る仕草をして、右手でオッケー?と聞いてみる。すると、店内の撮影はダメだと言われた。それは仕方がない。この素敵な本屋さんを目に焼き付けておこう、と思ったら、でも自撮り(セルフィー)はオッケーと伝えられた。本屋で自撮りをする人はいるのだろうか。少なくとも私は見たことがない。自分自身の写真は別にいらないので、「シェイシェイ」とだけ言って二階へと上がる。
セルフィーはオッケーとはどういうことなのかいまいち理解に苦しんだため、2階にいた別の店員さんに店内の写真を撮ってもいいか聞いてみると快く承諾してくれた。なぜ自撮りは大丈夫とさっき言われたのか、モヤモヤはするが話がややこしくなりそうなので聞かないでおく。
一回の様子。真っ黒な壁がシックな感じを醸し出す。
階段の途中にも余すところなく書籍が並んでいる。壁に描かれている「d」は「d design travel」のロゴによく似ている。
「The Music」のようなぐるぐる。
2階は本や雑誌、雑貨を扱う他に、アーティストの展示コーナーも設けられている。
薄い黄色の壁紙に可愛らしい作品が展示されている。
二階は主にアート作品展示場、建築関係の書籍、雑貨を扱っているようだ。奥をよく見ると何やら白いテントのようなものが。
中を覗いてみると、ちょっとした隠れ家のようなスペース。
景色を眺めながら本を読める。テラス席もある。階下で頼んだ飲み物を上に持ってくるのだろうか。
芸術関係の本がずらり。天井から床までびっしりと背表紙を向けて並べられている。分厚い書籍ばかり。
英語表記での注意書きも。たしかに本棚の奥についたてが無いから押し込んだら落ちてしまう。
これは「建築士」の棚。他にもかなり細かく分類されていて、世界建築、園林デザイン、建築タイプ、建築の詳細などの棚もあった。中国語で書かれた中国建築の棚は一番下の片隅に追いやられてる。
ほとんどが分厚い洋書。ライトアップもされている。
こちらは作家ごとにシリーズ化されている美術書。展示の仕方も一本調子ではなく、拘りが垣間見える。
日本語で出版されている本の中国語翻訳バージョンもある。ゴッホについてであろう。
建築士、安藤忠雄さんの本も中国語訳されている。平積みということは日本の書籍が上海でも注目されていることが伺える。
こちらは日本の住宅デザインについての書籍。たくさんの日本から輸出された書籍を発見する。
一番素敵だと思った本。上海の街並みや人々のディープな様子を収めた写真集だ。ページにも工夫がされていて、二つ折り製本になっていた。非常に欲しかったが、大きすぎるし重すぎるのと、何より値段が高すぎたので購入はできなかったが、いつか絶対に欲しい。
一周目はざっくりと、二週目はじっくり周り最上階である3階へ。
やっぱり「d design travel」があった!踊り場の左奥の棚を占めている。これは京都編。
こちらは「MAGAZINE D」というブランドドキュメンタリーマガジン。欧米系の雑誌かと思ったら、韓国発のようだ。表紙を見ただけで読書欲をそそられる。
表紙を向けて上から下まで綺麗に飾られている。中国の雑誌は無く、日本の雑誌で埋め尽くされている。しかも中国語訳されていない。「POPEYE」や「BRUTUS」、「SWITCH」もあるし、「NYLON」や「GINZA」のファッション誌も取り揃えている。
こちらの一角は洋雑誌。もちろん全て英語表記。
「獨力雑誌」と書かれた棚。独立出版社コーナーか。こちらも全て洋書。
柱には何やらサインのようなものが。誰のものなのか気になる。
なんとイベントコーナーまである。これから何か始まるのだろう。プレゼンテーターらしき人が店員と英語で会話していた。中国に来て初めて英語を耳にした。国外にも目を向けたブックカフェなのだと改めて感じる。
三階は外国の雑誌とイベントコーナー。外国の雑誌には、日本の雑誌が半分以上を占めていた。しかも日本語のまま売られている。メジャーなものからだいぶコアなものまで。初めて見る雑誌まである。なんでこんなに日本の雑誌が並んでいるのかどうしても知りたくなり、思わず近くにいた店員に話しかける。
すると、中国では日本の雑誌がポピュラーだから、と。
知らなかった。日本の雑誌がここまで中国にあるなんて。おそらくファッション誌など移り変わりの激しいものなどは毎回中国訳するには追いつかないため、日本語のまま売っているのだろうか。逆に中国の雑誌はどういったものがあるのか気になる。
最後にまた一階へ戻り、物色。
一階は主に、小説や洋書、映画についての書籍が置かれている。ただし文庫本は置いていなかった。
一階のメインの棚である「島」には、手に取りやすいよう、今人気であろう書籍が並んでいる。ここは全て中国語書籍。
川端康成の書籍発見。表紙が和風で素敵。
政治色が全くなかったこのブックカフェに、唯一あったアメリカについて書かれている本。表紙に書かれたタイトルを見る限り、どこかの国で書かれたものを中国語訳してあるものだと思われる。内容が気になる。
日本の本屋では本当によく目にする恩田陸の「蜜蜂と遠雷」。ここでも目立つところに置かれている。
その隣にも日本の書籍が。
またまた川端康成。表紙が本当に綺麗。
やはり分厚い「白夜行」。
ここからは村上春樹だらけ。アメリカの本屋でもよく見かける。
ここも。
よく見るとこれも。
奥に入ると洋書だらけ。
映画コーナーを覗いてみる。こちらも洋書と中国書籍が一緒になって陳列されている。日本ではなかなかない光景だ。
洋書の幅広さ、深さはやはり底知れない。どうしても日本語の書籍だけだと情報に限りがあるが、英語となると視野が一気に広がり、世界中で徹底的に調べられた書籍や資料がたくさん存在する。そこからより深く物事を知ることができる。日本の書店でも、洋書と邦書、関係なく陳列されるような、こういった光景をいつか見てみたい。
特撮コーナーにウルトラマンと円谷英二が。彼の肩書きが中国語で「怪獣大師」と書かれている。
自主制作映画コーナー。この他にも洋画、白黒映画、カンフー映画などかなり細かい分類分けが。
エピックフィルムコーナーには「今昔物語」や日本の妖怪についての書籍も。
喜劇、悲劇コーナー。
Aesthetic Science のコーナー。あまり馴染みがないが、どういったものなのか非常に気になる。直訳すると、美学的に見た科学、といったところか。
久石譲とRADWIMPSのCDが並んでいる不思議な光景。
改めて、中国語の書籍はもちろんのこと、英語や日本語の書籍や雑誌がところせましと並んでいるのには驚いた。
実際に、日本語の雑誌を立ち読みしている人を何人もいた。私の大好きな雑誌、「TRANSIT」を持っている人を見た時は思わず話しかけそうになった。
そしてこのブックカフェは、完全に客のための本屋なのだと感じた。
その理由の一つに、陳列方法のこだわりが挙げられる。眺めているだけで次から次へと思わず書籍に手が伸びるような本の置き方。
そして、取り揃えている書籍の分野の幅広さもぬかりない。自分の知らなかった分野に出会えるし、そこからさらに興味が湧いてくる。
つまりこのブックカフェは「本の魅せ方」がうまい。本、一冊一冊を大事に扱っていることがひしひしと伝わってくる。本の魅力をいかに伝えるかが工夫されている。私自身、「この本読みたい!」「欲しい!」と強く感じたし、素敵な本との出会いがたくさんあった。本をどんどん読みたくなってくる。
私は、本屋は客の興味をかき立てるようなものであって欲しい、と常に思っている。そんな本屋は理想的であり、まさにここはそれを体現していた。
さらに、このブックカフェは街に非常に馴染んでいる。本屋は地元の人に愛されてこそだ。そんな街と人とこのブックカフェが絶妙に調和しているTHE MIX PLACEで、多幸感に包まれた、素敵な2時間を過ごした。
THE MIX PLACE
880 Hengshan Rd, Shanghai
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