大人な雰囲気の漂う、小綺麗で落ち着いた街、衝山・和集の一角にTHE MIX PLACEはある。
THE MIX PLACEは、カフェとイベントスペースが併設されている、いわゆるブックカフェだ。
3階まである、こじんまりとした建物全体をこのブックカフェが所有している。
見た感じ、「本屋」っぽさはない。おしゃれなカフェといったところか。飲み物を飲む予定は無かったし、店の中をちょろっと覗くと値段が高そうな雰囲気。入りづらく感じ、建物の周りを一周してから意を決してドアを開ける。
いざ中に入ったら、カフェのスペースはほんの一部にしかなく、目の前に本がぶわーっと並んでいる。見た目こそ入りづらかったが、店内はすごく落ち着いた雰囲気の本屋さんだった。入った第一印象、「なんて洒落た本屋なのだろう」。
ひとまず一階をぐるっと一周してから、レジにいた店員に、「店内の写真を撮っていいですか」と英語と中国語に訳されたGoogle翻訳の画面を見せる。すると、画面に自動翻訳された文章が支離滅裂だったのか、首を傾げてう〜んといった具合に困っていた。
すかさずスマホをかざし、ジェスチャーでシャッターを取る仕草をして、右手でオッケー?と聞いてみる。すると、店内の撮影はダメだと言われた。それは仕方がない。この素敵な本屋さんを目に焼き付けておこう、と思ったら、でも自撮り(セルフィー)はオッケーと伝えられた。本屋で自撮りをする人はいるのだろうか。少なくとも私は見たことがない。自分自身の写真は別にいらないので、「シェイシェイ」とだけ言って二階へと上がる。
セルフィーはオッケーとはどういうことなのかいまいち理解に苦しんだため、2階にいた別の店員さんに店内の写真を撮ってもいいか聞いてみると快く承諾してくれた。なぜ自撮りは大丈夫とさっき言われたのか、モヤモヤはするが話がややこしくなりそうなので聞かないでおく。
一周目はざっくりと、二週目はじっくり周り最上階である3階へ。
三階は外国の雑誌とイベントコーナー。外国の雑誌には、日本の雑誌が半分以上を占めていた。しかも日本語のまま売られている。メジャーなものからだいぶコアなものまで。初めて見る雑誌まである。なんでこんなに日本の雑誌が並んでいるのかどうしても知りたくなり、思わず近くにいた店員に話しかける。
すると、中国では日本の雑誌がポピュラーだから、と。
知らなかった。日本の雑誌がここまで中国にあるなんて。おそらくファッション誌など移り変わりの激しいものなどは毎回中国訳するには追いつかないため、日本語のまま売っているのだろうか。逆に中国の雑誌はどういったものがあるのか気になる。
最後にまた一階へ戻り、物色。
一階は主に、小説や洋書、映画についての書籍が置かれている。ただし文庫本は置いていなかった。
映画コーナーを覗いてみる。こちらも洋書と中国書籍が一緒になって陳列されている。日本ではなかなかない光景だ。
洋書の幅広さ、深さはやはり底知れない。どうしても日本語の書籍だけだと情報に限りがあるが、英語となると視野が一気に広がり、世界中で徹底的に調べられた書籍や資料がたくさん存在する。そこからより深く物事を知ることができる。日本の書店でも、洋書と邦書、関係なく陳列されるような、こういった光景をいつか見てみたい。
改めて、中国語の書籍はもちろんのこと、英語や日本語の書籍や雑誌がところせましと並んでいるのには驚いた。
実際に、日本語の雑誌を立ち読みしている人を何人もいた。私の大好きな雑誌、「TRANSIT」を持っている人を見た時は思わず話しかけそうになった。
そしてこのブックカフェは、完全に客のための本屋なのだと感じた。
その理由の一つに、陳列方法のこだわりが挙げられる。眺めているだけで次から次へと思わず書籍に手が伸びるような本の置き方。
そして、取り揃えている書籍の分野の幅広さもぬかりない。自分の知らなかった分野に出会えるし、そこからさらに興味が湧いてくる。
つまりこのブックカフェは「本の魅せ方」がうまい。本、一冊一冊を大事に扱っていることがひしひしと伝わってくる。本の魅力をいかに伝えるかが工夫されている。私自身、「この本読みたい!」「欲しい!」と強く感じたし、素敵な本との出会いがたくさんあった。本をどんどん読みたくなってくる。
私は、本屋は客の興味をかき立てるようなものであって欲しい、と常に思っている。そんな本屋は理想的であり、まさにここはそれを体現していた。
さらに、このブックカフェは街に非常に馴染んでいる。本屋は地元の人に愛されてこそだ。そんな街と人とこのブックカフェが絶妙に調和しているTHE MIX PLACEで、多幸感に包まれた、素敵な2時間を過ごした。
THE MIX PLACE
880 Hengshan Rd, Shanghai